外部専門家で構成された社外調査チームによる調査報告書と再発防止策の提言を踏まえての取り組み

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2023年8月31日に当社及び当社グループ会社元役員2名が在任中に逮捕・起訴され有罪判決を受けるに至った件については、お客様、お取引様及び株主・投資家の皆様をはじめとする関係者の皆様に多大なるご心配とご迷惑をおかけしましたこと、改めて深くお詫び申し上げます。
当社は、逮捕当日より事実関係の調査、原因の究明、再発防止策の策定のために取り組んでまいりました。2024年5月9日に受領した外部専門家で構成される調査チーム(以下、社外調査チーム)からの調査報告書及び同報告書における再発防止策の提言を踏まえ、具体的な再発防止策や今後の取り組みを取りまとめました。
今後も再発防止策に全社一丸となって取り組むことにより、ステークホルダーの皆さまからの早期の信頼回復に努めてまいります。

社外調査チーム報告書の概要

社外調査チームの調査報告書に基づき、当社の理解により取りまとめたものです。

社外調査チーム設置の経緯

2023年8月31日、アインホールディングス及びグループ会社元役員2名が在任中にKKR札幌案件に係る公契約関係競売入札妨害(刑法第96条の6第1項)の容疑で逮捕された(以下、本件)。事業活動においてこのような法律違反の疑いを招く事態を生じさせたことを厳粛に受け止め、かかる事態を生じさせたことについての原因分析と再発防止策の策定を行い、コンプライアンス経営を徹底し、また、ステークホルダーへの説明責任を果たすため、かかる目的の達成に必要な範囲において事実関係を調査するべく、アイングループと利害関係のない外部専門家で構成された社外調査チームを設置することとした。

調査委嘱事項

  • KKR札幌案件に関する事実関係の解明
  • 類似事案の存否及び存在する場合の事実関係の解明
  • 本件刑事事件及び類似事案が生じた原因の分析と再発防止策の提言
  • その他、社外調査チームが本調査の目的に照らし必要と認めた事項

社外調査チームの構成

役職 氏名 資格及び所属
主査
(筆頭)
安田博延 弁護士(平河町法律事務所)
主査 結城大輔 弁護士・ニューヨーク州弁護士・公認不正検査士(のぞみ総合法律事務所)
主査 大東泰雄 弁護士・公認不正検査士(のぞみ総合法律事務所)
  佐藤文行 弁護士(のぞみ総合法律事務所)
  劉セビョク 弁護士(のぞみ総合法律事務所)
  吉田元樹 弁護士(のぞみ総合法律事務所)
  白水裕基 弁護士(のぞみ総合法律事務所)

なお、社外調査チームの構成員が所属する組織は、いずれも、アイングループとの間に顧問契約等の利害関係を一切有しない。
また、社外調査チームは、デジタル・フォレンジック調査に関し、調査の実効性及び実現性の観点から、専門的な知見及び経験を有し、かつアイングループからの独立性及び中立性を有する株式会社foxcaleを担当事業者に選定した。

調査期間

  • 実施期間 社外調査チームが設置された2023年10月5日から2024年5月1日までの期間
  • 対象期間 2017年9月27日から調査終了日である2024年5月1日までの期間

調査の方法

  • 関連資料の精査
  • 役職員に対するヒアリング(31名)
  • デジタル・フォレンジック調査(対象データ682,620件)

調査対象範囲

社外調査チームが設置された2023年10月5日時点までにアイングループが優先交渉権を獲得した敷地内薬局に係る入札等案件(公募型プロポーザル方式の案件を含む。)のうち、国公立病院等(KKR札幌案件と同様にKKRが開設する病院のほか、開設者が国立大学法人、公立大学法人、地方公共団体及び地方独立行政法人である病院を指す)が発注者となっている40件。

調査の前提と限界

本報告書は、アイングループにおいて、本件刑事事件及び類似事案に関する事実確認及びこれらの事案の発生原因の究明と再発防止策の策定のために用いられることを目的として作成されたもの。本件刑事事件の第一審判決に対して5月1日に控訴がなされ、判決確定までさらなる時間を要することを考慮して、現時点(5月9日)の報告書として提出するもの。調査においては、上記調査目的達成のため必要な範囲で本件刑事事件に関連する事実関係についても調査を行っているが、本件刑事事件に関する事実認定及び法的評価はいずれも刑事司法の場においてなされるべき事項であり、調査の対象に含まれていない。

事実関係(提案書の差替えの存在が認められてた案件に係る認定事実)

調査対象範囲とした40件のうち、提案内容の変更にわたる提案書の差替えが認められた案件は、KKR札幌案件を含め以下(1)~(3)の3件であった。

(1)KKR札幌医療センター

2020年4月頃から情報収集などの営業活動が開始された案件。2020年12月18日午前、土地の月額賃料450万円(ただし、敷地内薬局を含む建物の2階部分を月額賃料50万円にて賃貸するため差引き月額400万円)を内容とする提案書がKKR札幌医療センターに提出された。病院関係者より、より高い月額賃料を提案した競合他社がおり、このままでは優先交渉権者に選定されない可能性があるので提案書を差し替えられたい旨を伝えられ、2020年12月21日、土地の月額賃料を750万円(ただし、敷地内薬局を含む建物の2階部分を月額賃料50万円にて賃貸するため、差引き月額700万円)を内容とする提案書に差し替えた(1度目の差替え)。病院関係者の要請を受けて、月額賃借料に関する部分及び自由提案部分について記載内容を明確化するための修正をし、提案書にも同趣旨の修正を施したうえで同月23日に再度提案書を差し替えた(2度目の差替え)。

(2)X案件

本件の事業者の選定方法は、敷地内薬局建物の定期賃貸借の入札と敷地内薬局事業者の総合評価落札方式による一般競争入札の二段階の方法で行われた。本件では、月額賃料を記載した提案書を提出した後、提案書の提出期限の翌日に設定されていた入札書の提出日に、月額賃料を増額訂正した提案書に差し替えを行った。正式な応札としての賃料額はあくまで翌日に実施される定期建物賃貸借の入札価格であって、仮に入札前日に提出した提案書記載の月額賃料と入札価格に差があっても特に問題はないと聞いていたとのこと。社内においても、本来の提出期限後に提案書を差し替えることについて事前に認識していたにもかかわらず、何らかの疑義が呈されることはなかった。なお、当該入札について入札書の差替えの事実は確認されていない。

(3)Y案件

本件では、月額賃料等を含む提案書を提出した後、付帯条件を取り止める代わりに月額賃料を増額するとした提案書を作成し直し、翌日のプレゼンテーションにおいて、既提出の提案書ではなく、月額賃料を増額改定した提案書を陪席者に配布することをもって、提案書の差替えを行った。

上記(2)、(3)のほかにも、提出期限後に提案書の形式的な修正が行われた案件等の存在も検出されたが、例えば、賃料その他の提案内容自体を修正するものではなく、公募に応募した具体的な企業名が特定されないように修正した案件であった。


  • 敷地内薬局について
    保険薬局は独立性確保のため「保険医療機関と一体的な構造」であることが禁止されており、保険医療機関の敷地内に所在し公道等を介さずに行き来することのできる敷地内薬局の開設は認められていなかった。しかし、当該規制が車いすを利用する患者や高齢者等に過度な不便を強いている等の指摘があったことを踏まえ、2016年10月1日より、保険医療機関と保険薬局との間に公道等を介することが必須ではなくなった。これにより、2016年10月1日から、保険医療機関の敷地内に保険薬局を開設する形態(敷地内薬局)が認められることとなった。また、その後、国立大学法人法の改正(2017年4月1日施行)により、国立大学の土地等の資産活用が積極化し、当該改正も国立大学附属病院において敷地内薬局の誘致が進む一因となった。
  • 公募型プロポ―ザル方式について
    公募型プロポーザル方式とは、発注者が公募により企画提案を募集し、企画提案を行った事業者の中から企画提案の内容に基づいて優先交渉権者を決定し、その後、当該優先交渉権者と契約交渉、締結を行う発注・契約方式をいう。実際の敷地内薬局案件の公募型プロポーザル方式による発注においては、公募があったのち、参加する事業者において一定期日までに公募手続への参加表明書を提出し、その後、参加表明を行った事業者のうち応募資格を満たす事業者において一定期日までに企画提案を行う、という順序で行われる場合が一般的であった。提案書やプレゼンテーションによる企画提案を経て優先交渉権者が選定されると、その後、発注者及び優先交渉権者は提案内容をもとに契約締結に向けて条件交渉を行う。案件によっては、交渉過程を経て最終的な契約内容が企画提案時の内容から変更される場合もあり、また、契約締結に至らない場合もある。

事実関係(内部統制、コーポレート・ガバナンス、コンプライアンス、リスクマネジメント)

(1)敷地内薬局事業に関する内部統制及びコーポレート・ガバナンスの状況

敷地内薬局事業における出店のための営業活動に関する法務・コンプライアンスリスクについては、一部の規程やガイドラインに一般的な規定が存在するということを超えて、かかるリスクの観点からの業務の管理・監督・指導や遂行が組織的になされることがほぼなかったものと認められる。また、内部統制・内部監査機能は、各店舗における業務に関するリスク管理、効率性、法令遵守等とその監査に集中的に振り向けられ、本社機能としての管理部門による敷地内薬局事業における出店のための営業活動に対する管理・監督機能の実効性確保やそれに対する監査については、ほぼ機能していない状態にあると認められる。さらに、各担当者の側では、取締役らが個別案件における意思決定や業務遂行について責任をもって確認・承認を与えてくれていると意識していたものと認められるのに対し、取締役らの側では、多数の案件が存在する中で、明示的に自身に対し確認、承認、指示等が求められていないこともあり、何も答えないことが確認や承認を与えたと受け取られ得る実情への明確な認識がなかったものと認められ、責任の所在が曖昧なままとなっていたものと考えられる。

(2)敷地内薬局事業に関するコンプライアンスの取り組み状況

大谷氏の「曲がったことは許さない」という基本的な考え方は、単なる法令遵守の域を超えグループ内で一定の定着を見ていたものと考えられ、また、贈収賄・腐敗防止の取り組みについては、国公立病院の医師等、公務員等と接することの少なくないグループの事業との関係で、その遵守の重要さが意識され、そのための自制がよく徹底されていたものと認められる。一方で敷地内薬局事業に関する基本的なルール・方針・規程に関しては、一般的な法令遵守や取引先との公正な関係の維持に関する規定があるものの、抽象的な内容にすぎず、十分な検討や整理がなされていないなど、営業の現場において十分実効的に機能する内容とは認め難い状況であった。さらに、コンプライアンス委員会ではKKR札幌案件は議題として取り上げられておらず、内部通報関係の検討・対応のみがなされている状態であった。また、経営陣・管理職における意識不足ないし誤まった認識が存在した可能性や、コンプライアンスの実践という観点からの周知・研修の不足があった。

(3)敷地内薬局事業に関するリスクマネジメントの取り組み状況

人の健康に関与する事業を展開する企業としての社会的責務として、適切なリスクマネジメントを行うことで社会的責任を果たすという観点から関係規程等が策定されているものの、敷地内薬局事業における出店のための営業活動に関するリスクは含まれておらず、敷地内薬局事業における出店のための営業活動に関するリスク管理の観点での内部監査自体、これまでなされていない。

原因分析と再発防止策の提言

原因分析

  • 経営陣・管理職の敷地内薬局事業における出店のための営業活動に関するリスクについての問題意識の不足(“意識”に関する原因)
  • 敷地内薬局事業における出店のための営業活動に関するリスクについての内部統制、リスクマネジメント体制の機能不全(“仕組み”に関する原因)

再発防止策の提言①:経営陣・管理職における意識改革等の取り組み(”意識”に関する対策)

経営陣における意識改革とともに、それを明確に全社に示す継続的な取り組みが必要不可欠。経営トップ自身が現状と課題を正確に認識した上で、その認識と今後に向けた取り組みの決意を明確に発信する必要がある。そして、かかる意識改革は、他の経営陣や実際に業務を遂行する管理職の次元まで含めて、全社的な取り組みとして推進することが重要である。
かかる“意識”に関する改革等の取り組みも、本件刑事事件を受けた一時的な対策となってしまわぬよう、中(長)期的な計画を立案した上で、継続的に取り組んでいくべきである。

再発防止策の提言②:内部統制、リスクマネジメントの取り組み実行化(”仕組み”に関する対策)

より組織的・システム的な意味での“仕組み”自体に関する対策として、内部統制とリスクマネジメントの取り組みの実効化を挙げる。本件で問題となった差替行為の再発を防止するという観点では、具体的には例えば以下のような取り組みを推進することが考えられる。

  • コンプライアンスとリスクマネジメントに関する規程・方針・マニュアル等の充実
  • 事業に関する業務フローの整備(責任の所在の明確化)
  • 周知・研修における工夫
  • 敷地内薬局事業における出店のための営業活動に対する管理部門によるリスク管理機能の強化
  • 敷地内薬局事業における出店のための営業活動に対する内部監査の強化
  • 社外役員によるガバナンス

調査報告書(全文)

再発防止策の取り組み状況

現在までの取り組み

  • コンプライアンス推進体制の確立、浸透、定着の達成を目的とするコンプライアンス委員会の役割と責任をより適切に果たしていくため、コンプライアンス委員会規約を改定
  • リスクマネジメント強化を目的に、現行の組織編制とリスク管理規程を合致させ、各部門の長が管理するリスクを再整理するため、リスク管理規程を改定
  • 取締役会及び監査役会のガバナンス機能発揮のため、内部監査部門が直接報告する仕組みを構築すること等を目的として、社内規程を改定
  • 営業担当者向けの実務マニュアル(営業活動における公的な医療機関等への対応について ポケットマニュアル)を作成・配布

2025年4月期に予定している取り組み

  1. 「法務・コンプライアンス」を含む各スキルを充分に発揮できるスキルマトリックスとなるよう新任取締役候補を検討
  2. 公正な競争・競売・入札等の公正を害するおそれのある行為の禁止等についての社内規程などの作成
  3. 事業に関する業務フローの整備(責任の所在の明確化)
  4. 内部監査体制の増強
  5. 贈収賄・腐敗防止方針について、公務員等の概念の説明や事例をマニュアル・FAQで充実
  6. コンプライアンスやリスクマネジメントについての規程等を踏まえた、管理部門によるリスク管理の実効化
  7. 経営陣の、社外役員・外部専門家との意見・情報交換の機会の構築
  8. あらゆる立場の役職員に対する周知・研修(外部専門家を講師に招いた役職員教育、eラーニング、研修・勉強会、関連資料の回覧、アンケート)

取り組み強化のために

  • 再発防止の取り組みの継続的な計画への社外役員参画により、実効性ある再発防止策の推進を確保していく
  • 経営トップが現状と課題を正確に認識し、率先して継続的な計画の策定と実践を行う

ステークホルダーの皆様へ向けて

当社ならびに当社グループ会社元役員が在任中に逮捕をされたこの度の件につきましては、お客様、お取引様及び株主・投資家の皆様をはじめとする関係者の皆様に多大なるご心配とご迷惑をおかけしましたことを、深くお詫び申し上げます。
本件にあたり、私は「私たちは、人々の健康に携わる業務に従事していることを常に認識し、良識と倫理観をもった企業活動を心がけます。」から始まる当社の「アイングループ行動指針」を改めて胸に刻みました。個人として、また当社グループの代表として、この高い倫理観を保ち、誠実に企業活動を行うことを誓い、そしてグループ全社で思いをひとつにしてまいります。
この実践と継続により、ステークホルダーの皆様から、これまで以上に信頼される企業へと成長することを固くお約束致します。

株式会社アインホールディングス 代表取締役社長 大谷 喜一の自署
株式会社アインホールディングス 代表取締役社長 大谷 喜一の自署

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