気候変動課題への対応(TCFD)

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当社グループは、環境保護・負荷低減をマテリアリティ(重要課題)と認識しています。中でも気候変動課題は年々深刻化しており、持続可能な社会実現のためにも重要な項目のひとつであると考え、2022年4月には、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)※1の最終報告書(TCFD提言)に賛同し、あわせて、TCFDコンソーシアム※2にも参加しています。また、TCFD提言が推奨する4つの開示項目について、次の通り整理し、設定しています。

※1 TCFD:「気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」の略。G20 財務大臣及び中央銀行総裁の意向を受け、金融安定理事会(FSB)が設置。2017年6月に最終報告書「TCFD提言」を公表

※2 TCFDコンソーシアム:TCFD提言へ賛同する企業や金融機関等が一体となって取り組みを推進し、企業の効果的な情報開示や、開示された情報を金融機関等の適切な投資判断につなげるための取り組みについて議論する場として、2019年5月27日に設立

ガバナンス

気候変動課題、また気候変動課題に対するリスク管理や戦略、目標の設定等については、サステナビリティ委員会のもとに気候変動対応チームを設けて、データ集計や原案策定等にあたらせ、これを同委員会において議論し確定しています。サステナビリティ委員会は、グループ全社で横断的にサステナビリティ経営を推進するため、取締役会承認のもと設置された組織です。委員長である代表取締役社長をはじめとする経営陣や基幹グループ会社社長、各部門統括役員等で構成され、議論された内容については、取締役会に報告(年1回以上)し、取締役会が重要事項の決定と、同委員会の取り組みの監督を行っています。

リスクマネジメント

サステナビリティ委員会のもとに設けている気候変動対応チームが、関連各部と協議のうえ、全社的なリスクの洗い出し(リスク評価)を行います(年1回以上)。取り組み、KPI、進捗等についても、気候変動対応チームが関連各部と連携して適正な管理(リスク管理)を行うことで、目標の達成を目指します。
また、気候変動対応チームが主導するリスク評価・管理の内容は、グループ全社の横断的課題を統括しているサステナビリティ委員会に報告してグループ全体の共通認識とし、さらなる議論と検討を進めます。

戦略

当社グループにおける重要なリスク・機会の特定

気候変動にともなうリスク及び機会には、低炭素社会への移行によって引き起こされるもの(移行リスク・機会※3)と、極端な気象現象の過酷さと頻度の増加や海面上昇その他の長期的な気象パターンの変化によって引き起こされるもの(物理リスク・機会※4)が考えられます。当社グループにかかわるすべてのリスク・機会項目の洗い出しを行った後、その中でも重要な影響を与えるリスク・機会を、次の通り整理しました。

移行リスク・機会

  アイングループにおける重要なリスク・機会
政策・規制・法
  1. 温室効果ガスに関する規制強化
  2. その他エネルギー・資源に関する規制強化
市場と技術の転換
  1. 省エネルギー対策・再生エネルギープログラムの推進
評判
  1. ステークホルダー(責任ある行動に対する期待と懸念)
  2. お客さま・患者さま意識・行動の変化

物理リスク・機会

  アイングループにおける重要なリスク・機会
急性
  1. 異常気象の激甚化(台風、ゲリラ豪雨等風水害)
  2. 気候変動に起因する感染症の流行
慢性
  1. 降水・気象パターンの変化(平均気温上昇、海面上昇)

※3 移行リスク・機会:低炭素社会への移行によって引き起こされるリスク・機会
※4 物理リスク・機会:気候変動をともなう、極端な気象現象、またその過酷さや頻度の上昇、海面上昇等の長期的な気象パターンの変化等によって引き起こされるリスク・機会

シナリオ分析

グループ全体の売上高の9割を占めるファーマシー事業 調剤薬局の国内全店舗と、リテール事業 アインズ&トルペの国内全店舗を対象として、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)※5等が想定する複数のシナリオに基づき、考えられる気候変動に関連する移行リスク・機会、物理リスク・機会を幅広に検討しました。特に重要なリスクと機会における影響の分析に着手しています。

シナリオ 2℃シナリオ SSP1 RCP2.6
4℃シナリオ SSP5 RCP8.5
対象事業 ファーマシー事業 調剤薬局の国内全店舗
リテール事業 アインズ&トルペの国内全店舗
対象期間 2030年、2050年

※5 IPCC:「気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)」の略。WMO(世界気象機関)とUNEP(国連環境計画)のもとに設立された組織。195の国・地域が参加。各国政府の気候変動に関する政策に科学的な基礎を与えることを目的とし、気候変動に関する最新の科学的知見(出版された文献)についてとりまとめた報告書を作成

事業インパクトの評価

2030年+2℃の世界では、低炭素・脱炭素が推進されることにより、特に温室効果ガスに関する規制強化(主に炭素税の課税や排出量取引制度等)の移行リスクが高まると考えられます。
当社グループのCO₂(GHG)排出量(Scope1、2)の多くは、電力に由来するものです。よって、電気使用量や調達時の価格・CO₂排出係数等により、追加のコストが発生する可能性があります。ただし、省エネルギー・再生エネルギーの取り組みによって、炭素税による影響を最小限にするとともに、電気使用量を削減することで、財務、事業戦略等に重大な影響を及ぼさないことを確認しています。

2030年+4℃の世界では、異常気象の激甚化や気象パターンの変化(店舗・事業所の被災やパンデミック発生等)による物理リスクが高まると考えられます。
当社グループでは、いかなる状況下においても、社員の生命・健康を守り、医薬品及び医療サービスの提供を遂行することが、社会のインフラのひとつとして、期待・要請されている役割であると認識しています。この役割を果たすためにも、災害対応については、BCPの強化・継続改善をはじめ、全社員・またその家族の安否報告訓練や避難訓練、物流強化等、気候変動に適応するための取り組みを推進しています。今後は、さらにリスクの高い地域・店舗の分析を進め、さらなる防災対策を検討します。
また、気候変動を起因とする感染症等が流行した場合、特にファーマシー事業においては、処方箋応需枚数等に影響を受ける可能性があります。自然災害における対応と同様、医療サービス提供のための体制づくりを強化していきます。

このように、増大するリスクを見通した対策を進めることにより、財務・事業戦略等へ重大な影響を及ぼさないよう、備えることが可能であると考えています。同時に、さらにレジリエンスの強化・向上を図ることが、お客さまや患者さま、地域住民の方等が必要とする医療の継続提供につながり、事業の発展に大きく貢献すると考えています。

移行リスク・機会

  アイングループにおける重要なリスク・機会 主な事業インパクトの評価
政策・規制・法
  1. 温室効果ガスに関する規制強化
<2℃>
  • 炭素税の影響によるコスト増加
  • 温室効果ガス排出量の管理やその他認証等によるコスト増加
<4℃>
  • 炭素税は導入されないと想定
  • 温室効果ガス排出量の管理やその他認証等によるコスト増加
政策・規制・法
  1. その他エネルギー・資源に関する規制強化
<2℃>
  • 再生エネルギーが積極的に導入され、炭素税の影響によるコスト減少
<4℃>
  • 再生エネルギーは積極導入されないと想定
市場と技術の転換
  1. 省エネルギー対策・再生エネルギープログラムの推進
<2℃>
  • 再生エネルギーが積極的に導入され、炭素税の影響によるコスト減少
<4℃>
  • 再生エネルギーは積極導入されないと想定
評判
  1. ステークホルダー(責任ある行動に対する期待と懸念)
<2℃><4℃>
  • 投資家動向の変化による資本への影響
  • 企業の社会的信頼等レピュテーションへの影響
  • 不買運動等による売上減少
評判
  1. お客さま・患者さま意識・行動の変化
<2℃><4℃>
  • 企業の社会的信頼等レピュテーションへの影響、またそれによる売上への影響
    (来局・来店客数の変化、新たな収益機会の獲得、売れ筋商品変化、サステナビリティ関連の認証取得状況等)

物理リスク・機会

  アイングループにおける
重要なリスク・機会
主な事業インパクトの評価
急性
  1. 異常気象の激甚化(台風、ゲリラ豪雨等風水害)
<2℃>
  • 自然災害による浸水被害が増加し、コスト増加
  • 自然災害対応・被害による営業停止日数が増加し、売上減少
<4℃>
  • 自然災害による浸水被害が2℃シナリオに比べさらに増加し、コスト増加
  • 自然災害対応・被害による営業停止日数が2℃シナリオに比べさらに増加し、売上減少
急性
  1. 気候変動に起因する感染症の流行
<2℃><4℃>
  • ファーマシー事業、リテール事業の需要変化・拡大による、売上増加
  • 感染症流行拡大(パンデミック等)により営業停止日数の増加、売上減少
慢性
  1. 降水・気象パターンの変化(平均気温上昇、海面上昇)
<2℃><4℃>
  • ファーマシー事業、リテール事業の需要変化・拡大による、売上への影響(来局・来店客数の変化、売れ筋商品変化、PB商品製造や物流の停止等)
  • サプライチェーン影響による売上減少
    (水資源不足・変化、オリジナルブランド商品製造停止、物流停止等)

指標と目標

当社グループは、2050年カーボンニュートラル(自社の事業活動にともなう、CO₂(GHG)排出量(Scope1・2)の実質ゼロ)の実現に向けて積極的に取り組むこととし、気候変動の評価指標として、CO₂(GHG)排出量と再生エネルギー由来電力への転換率等を選定しました。さらに2030年目標として「CO₂(GHG)排出量(Scope1・2)2021年度比 30%削減」、「再生エネルギー由来電力への転換率 30%」を設定しており、目標と実績は下記の通りです。
Scope3の排出量の削減に向けては、卸会社と協業した取り組み「医療用医薬品の配送回数の削減のトライアル」等を実施しています。

指標と目標

指標 2022年度進捗及び
取り組み状況
2030年度目標
(あるべき姿)
グループ全体のCO₂(GHG)排出量を把握し、適切に管理・監督ができる業務体制を構築する
  1. Scope1・2におけるCO₂(GHG)排出量
  2. Scope3におけるCO₂(GHG)排出量
  3. CO₂(GHG)排出量の削減率
  1. 19.1千t-CO₂※6
  2. 667.9千t-CO₂※7
  3. 総量 9.0% 排出量原単位※8 19.4%
Scope1・2におけるCO₂(GHG)排出量削減率30%※9
カーボンニュートラル実現に向けて、適切な目標設定と達成のための取り組みを実施する
  1. 再生エネルギー由来電力への転換率
  1. 0%
30%※10

※6・7 総排出量
※8   排出量原単位:Scope1+Scope2(t-CO₂)/連結売上高(億円)にて算出

※9   基準年(2021年度)排出量に対する削減率
※10 基準年(2021年度)使用電力全体に対する再生エネルギー転換率

CO₂(GHG)排出量(グループ全社)実績

2022年度

Scope 排出量(千t-CO₂)
Scope1 1.1
Scope2 18.0
Scope3 667.9
Scope3 内訳
項目 排出量(千t-CO₂)
【カテゴリー1】購入した製品・サービス 613.0
【カテゴリー2】資本財 31.9
【カテゴリー3】Scope1・2に含まれない燃料及びエネルギー関連活動 0.0
【カテゴリー4】輸送、配送(上流) 2.8
【カテゴリー5】事業から出る廃棄物 3.0
【カテゴリー6】出張 8.7
【カテゴリー7】雇用者の通勤 8.2
【カテゴリー8】リース資産(上流) 該当なし
【カテゴリー9】輸送、配送(下流)※11 0.0
【カテゴリー10】販売した製品の加工 該当なし
【カテゴリー11】販売した製品の使用※12 0.0
【カテゴリー12】販売した製品の廃棄 0.0
【カテゴリー13】リース資産(下流) 該当なし
【カテゴリー14】フランチャイズ 該当なし
【カテゴリー15】投資 該当なし

開示内容の適切性・信頼性向上を目的に、CO₂(GHG)排出量(Scope1・2・3)の算定手法等につきましては、先進的に取り組みを推進されている事業会社さまよりご助言をいただいております。

※11 顧客(お客さま・患者さま)がアイングループの店舗を利用いただく際の排出量も含む
※12 直接使用段階排出・間接使用段階排出ともに影響はほぼないと想定し、推計値0とした



今後も、TCFD提言に基づく情報開示の充実を図るとともに、気候変動に関わる政策や法規制の制定等の変化にも対応した、事業戦略・気候変動の緩和策及び適応策の実施を進めていきます。気候変動課題に適切に対応することで、ステークホルダーの皆さまの期待や要請に応えていきます。